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日本療術福祉協会付属療術所

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『足裏療法、明日への提言』―足部経絡療法の確立を目指して―

足裏療法には、大きく分けて2種類の方式が存在している。

 第1は、我が国で古くから行われて来た按摩・指圧的な流れとも言うべきいわゆる足裏療法であり、その多くは、棒等を使っての強い刺激で押す方法で、棒等の使用は按摩指圧師法による摘発を避ける意味あいも含んでいる。此れが、おそらく多くの日本人が『足裏療法』と聞いて、真っ先に思い浮かべるものではないかと思う。

 第2は、欧米などで行われている、足の裏の反射区という部分に、神経に対して電気的な刺激を惹起してアプローチする方法で、此れは現在では欧米の医大でも行われている、鍼治等に対する物理的療法論理にも通じる部分があると考えられる方法だ。(この方式を仮に『欧米式』とする。)

 

 この2つは何がどう違うのか?足裏療法の方式が、大きく2種類あると聞けば、当然それは疑問に思う事だろう。

 先ず、按摩・指圧の流れ、俗に言う東洋医学な足裏療法と言うものは、比較的強い刺激で足の裏を押す、所謂『足ツボ』に対してのアプローチで、此れはどちらかというと、経験と伝承の上に成り立ったモノだと考えられる。

 一方の欧米などで行われている方式は、一口で言うなら物理的な医学理論を根底に確立された、言わば『西洋医学』的なモノだと考えても良いだろう。

 

 

 

『現場からの考察』

 しかしながら、欧米等で行われている方式というのは、恐らく日本では余り馴染みがないものだろうと思うので、先ずは其方を詳しく説明して行こう。

 初めに、欧米等で行われている方式は電気的な刺激で惹起――という事を書いたが、此れは別に、足の裏に電気治療のパッド(電極)を張ってとか、そう言う事ではない。

 足の裏の反射区という区分された特定部分に対して、指での適切な刺激を加えるのである。――と聞くと、『其れって按摩・指圧の足裏とどう違うの?』と思うだろうが、欧米式の場合は、その刺激を神経に対する電気信号への変換と捉えて施術を行うのだ。

 足の裏に限らず、身体は外的刺激を受けると、其の刺激が神経の中で変換され電気信号となって脳に伝わる。この事実は、多分御存知かと思うが、反射区に刺激を与えた場合、その刺激の電気信号は脳だけでなく、反射区の対応した部位にも神経を経由し電気信号として伝わって作用し、施術効果が出ると言う訳だ。

 では、何故効果があるのか?其れは、足の反射区の中には東洋医学で言う所のツボが含まれている。ツボは神経医学的には神経の分岐点(シナプス)であるから、反射区への刺激は当然そのツボにも作用する訳だ。そうなるとツボへの刺激がツボとツボを結んでいる神経(東洋医学的に言う所の『経絡』)を通って対応部位へと伝わる。そして、各々の経絡は特に内蔵に強い影響力を持って居る為に効果が出ると言う訳だ。

 

 だが、そうである事を考えると、按摩・指圧の足裏も、欧米式の足裏も、いずれも反射区やツボ刺激によって生じる電気信号を用いて施術を行っているので同じに思えるが、実効性の点で最大の違いを上げるとすれば、其れは施術の際に発生する『痛み』との関連ではないかと思う。

 決して『強い刺激によって生じる痛み』が一概に悪いという訳ではないので、誤解しないで頂きたいが、恐らく多くの日本人は足裏療法に対して『痛そう』と言うイメージを持っているのではないだろうか?(実際に施術を受けた経験のみならず、テレビのバラエティー番組等での芸能人の過剰とも取れる反応を見て等……)

 足裏療法は、足の裏に指や棒で刺激を加えるのだから『無痛』と言う事は、先ず有り得ない訳なのだが、しかし、一般的に良く知られている足裏と、欧米式の足裏では、私が体験した限りでは、感じる痛みに相当な差があるように感じた。

 強い刺激や棒を使った施術の足裏の痛みが『痛い!』と身体を固くしてしまう位のモノだったとしたら、欧米式の足裏の痛みは『気持ち良く……痛いなぁ?』程度であり、欧米式の方が心身がリラックス出来た。

 勿論、刺激の感じ方は人それぞれであるし、強い刺激の方が好きだと言う人も現実に居るから、一概にどちらが良いと言う事は言えないだろう。しかし、人は強い痛みを感じると、身体を硬直させる。これは、痛みの信号を神経を通じて受け取った脳が、防御の姿勢を取らせる為である。

 身体を硬直させると言う事は、力が入っていると言う事であり、リラックスしている状態とは言い難く、また、長い間身体を硬直させていると疲労感も感じるだろう。(強い刺激の施術を受けた際に、施術後に疲労感を感じた事がある方も居るのではないだろうか?)

 加えて、強い刺激によって、強い痛みを感じた場合、次の刺激が来る際に『また痛いのではないか?』と身構え、刺激が来る前に身体を硬直させる事は少なくなく、この状態で『力を抜いてリラックスしてください』と言われても、其れは中々難しいのではないかと考える。

 又、強い刺激を用いると言う事は、施術者側も強い力を入れると言う事で、その事に依って施術者側にも、神経電流の正しいバランスを崩す負担が掛かる事は容易に想像の付く所で、その負荷は被施術者の神経電流の流れを阻害し、効果を半減させる。

 更に言うなら、施術者が『リラックスしてください。力を抜いて楽にしてください。』と言うと言うのは、リラックスしている状態の方が施術効果があると考えているからであり、そうであるのならば如何に施術される側がリラックスした状態で施術を受けることが出来るかを考える必要があるだろう。

 そのリラックスした状態で施術を受けて貰う方法として、私は欧米式の『痛いけど気持ちいい』(以下『快痛』と表記。尚『快痛』という言葉の定義については、別稿で記述します。)刺激を選択している。

 自分が施術を受ける側として欧米式を体験し、そして施術を行う側として欧米式を採用して感じたのは、『施術者側の負担も少なく、施術を受ける側もリラックス状態で居られる』と言う事だ。

 施術者の負担も少なく、施術を受ける側もリラックスした状態で施術を受けられると言うのならば、より高い施術効果を期待する事も出来ると思うので、相手によって刺激の強さを変え、その人の『快痛』の範囲で施術を行う事が必要ではないかと考える。

 

 

 

『歴史に見る展開』

 話は変わるが、足裏療法に関する資料は決して多くは無い。その中で1976年に、ドイツ・ハイデルベルクのKarl F.Haug Verleg社より刊行された、Hanne Marquardt著の『Reflexzonenarbeit am Fuß(邦訳『足の反射療法』医道の日本社)』は名著として知られるが、それによると足裏療法の歴史は古く、5000年も前から中国やインドでは知られていたと言う。

 つまり、少なくとも東洋、アジアでは紀元前から足裏療法が普通に行われていたと言う訳だ。

 では欧米、西洋ではどうかと言うと1582年にヨーロッパでDr.アダムスとDr.アタティスによって、足裏の反射区を使った治療法が発表されている。

 洋の東西で言うと、随分と歴史の古さに差があるように思うが、足裏療法の研究が盛んに行われていたのは、実は欧米の方である。

 前述したように、俗に言う東洋医学な足裏療法は経験と伝承によって現代まで伝わっており、現代に於いても前提となっているモノは、過去の経験の蓄積であると言っても良いだろう。

 しかし欧米では、この療法が有効であると言う事が発見されると、其れを医学的、物理的に解明しようとする動きが出て来たらしい。

 1916年には、Dr.バワーズが、『区帯療法』の創始者であるフィッツゲラルド博士の治療法を公にし、その1年後に出版された『ゾーン療法』という本の中で歯科、産婦人科、耳鼻咽喉科、カイロプラクターに向けての治療法や提案などが織り込まれている。

 1925年には、ホワイト博士が『ゾーン療法はアメリカ全土に知れ渡っているし、各種雑誌や新聞にも広く紹介されている』と述べ、この療法の基礎が確立された事を発表している。

 他にも、1930年代には理学療法士のユーニン・インガムが、最も強力な反射点が足に有る事を見出し、現在よく知られている足裏のマップを纏め上げた。(以上『足の反射療法』より。)

 また、2005年に産調出版から刊行された、Janet Wright著、木塚夏子訳の『リフレクソロジーと指圧』には『1970年代になると代替療法の分野での関心が高まり、英国リフレクソロジー学校がアン・ギランダースによって設立されている。』と記されている。

 当然そこに至るまでの過程には、医学的、物理的な理論の証明が成されて来たのは間違い無く、東洋医学で言う所の『ツボ』が神経の分岐点であるという事も物理的に解明され、それ等が総合的に組み合わさり、足裏療法、反射療法と言うものは、経験や伝承で伝わって来た物から、『学問』へと昇華したと言えるのだ。

 現実に、現在アメリカの大学の医学部で使われている鍼治療のマニュアル本『A MANUAL OFNEURO-ANATOMICAL ACUPUNCTURE(神経解剖学による鍼治療マニュアル)』は神経解剖学からのアプローチが成されていて、その中には当然足の神経分布も掲載されており、その分布は足裏の反射区マップと略合致していると言える。

 

 

 

『発展への展望』

 この事から、足の反射区への刺激は、神経解剖学の観点から見ても効果が望めると言い得るのである。

 ならば、その反射区への刺激による効果を用いた足裏療法に於いて、より効果を高める方法と、注意すべき点は何であろうか?

 あらゆる刺激は神経を経由し、そして脊髄を通って脳へと到達すると言うのは御存知かと思うが、其れは同時に身体中の神経は脳に到達する前に脊髄に接続されていると言う事でもある。

 当然足裏の神経も、脊髄に接続されている訳だが、其れを考えた場合、足裏療法を行う場合、脊髄の歪みやずれにも注意する必要があるのではないかと考える。

 と言うのも、脊髄の歪みやずれによって神経圧迫が起きている場合、神経を経由して流れている神経電流が圧迫によってその流れが悪くなる。水の流れているホースを踏みつけた時に、水の流れが悪くなるように。そうなれば当然、反射区を刺激する事によって生ずる電気的信号を用いて行う足裏療法の効果は減衰すると言えるだろう。

 ならば、当然の事ながら、足裏療法の施術者は、脊髄や骨の歪みやずれにも注意し、それらを整体的、所謂カイロプラクティック的な方法を持ってしてでも、歪み(・・)()ずれ(・・)を正してやる必要があるのではないだろうか?

 歪みやずれを治して、骨を正常な位置に戻し、神経の圧迫を取り除いてやれば、電気信号(神経電流)の伝達はスムーズになり、足裏療法の本来の効果を最大限に引き出す事が出来ると考えられるのだから……。

 勿論、それらの操作は一朝一夕で習得できる物ではないが、そう言った『骨の位置の正常化』を併用する事で、足裏療法はより高い効果を持った療法となる筈である。

 また、脊髄からは各臓器への支配神経が出ているので、足裏療法を行う際に、単純に内蔵の反射区を押すだけでなく、胸椎や腰椎の反射区を、夫々の数で分割して刺激してやれば、該当臓器への関節的なアプローチも可能になる筈だろう。

 日本に於ける足裏療法の認識の多くは『癒し』『リラクゼーション』と言った感じで、どちらかと言うとマッサージの類に近い様に思うが、整体的・カイロプラクティック的操作を併用して骨のずれ等を矯正し、また胸椎・腰椎の反射区の分割による施術を使えば、『癒し』よりも1ランク上の『療法』となるのではないか?

 公益法人の常務理事として、また自身も足裏療法の施術者として、私はそう考える。

 

 

 

『結びに』

 最後に、私自身が体験した事実を少し述べさせていただきたいと思う。

 一昨年の事になるが、私の父が肝臓癌を患い、肝臓の8分の1を切除すると言う7時間以上の手術を行った。(手術は無事に成功し、今も元気に生きている。)

 その手術の前後に、私は父の足裏療法を行っていたのだが、手術前の肝臓の反射区には約2㎜ほどの『しこり』が存在していたのだが、手術後に改めて足裏療法を行った時には、そのしこりは全く感じられなくなった。

 此れは後から分かった事なのだが、肝臓の反射区をそのまま肝臓に置き換えた時、しこりを感じた部分と言うのは、病院で発見された癌の場所と略一致していた――つまり、癌の反応が、反射区に『しこり』と言う形でハッキリと表れていたと考えられるのだ。

 そしてもう一つ、癌だけでなく転移の危険性から胆嚢も摘出したのだが、手術後の足裏療法の施術では、胆嚢の反射区を押しても何の反応もなくなっていた。(どんな反射区でも、押せば何らかの反応を指で感じるモノなのだが……)これは、摘出した事で身体の中から胆嚢がなくなり、同時に反射区も消えてしまったとも考えられる。

 此れは私にとって非常に貴重な体験だったと同時に、反射区と言うモノは確かに存在し、疾病の反応は反射区にも現れるのだと実感した出来事でもあった。

 

 尚、本文では一般的な名称である『足裏療法』と表記したが、当法人ではより実態に則した『足部経絡療法』の名称を使用し、教育や実習を行っている事を付記すると共に、引用した資料の『Reflexzonenarbeit am Fuß』は直訳すると『足の反射帯の操作』であり、欧米では日本で一般的に使用されている『足裏』と言う名称は使用されていないという事実も、併せ明記しておきます。

 

 

 

 

平成30年5月16日

 

特定非営利活動法人日本療術福祉協会 

常務理事 中村 嶺太郎

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プロフィール

HN:
中村嶺太郎
年齢:
40
性別:
男性
誕生日:
1983/11/02
趣味:
アニメの二次創作など

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