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日本療術福祉協会付属療術所

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『読売新聞夕刊 “からだCafé” の記事に寄せて』

 平成29年(2017年)12月20日付の、読売新聞夕刊の8ページ目に掲載された、「からだCafé」の記事について、特定非営利活動法人日本療術福祉協会の常務理事として私見を述べる。

 この記事は「関節を鳴らすのは体に悪い?」と言う見出しの下、何故関節が鳴るのかという事に触れているのだが、その中にカイロプラクティックの危険性を伺わせる内容が含まれていた。

 その部分については後述するが、まずこの記事では関節が鳴る理由について、「カナダの研究者がMRIを使って調べた結果、指を引っ張ると関節の中を満たす関節液に空洞ができ、その瞬間に音が鳴る」と言う趣旨の事が書かれており、同時に「音を鳴らす事が手に悪い訳ではない」と言う事を「米国人の男性が50年左手だけを鳴らし続けた結果、関節炎も起きなかった」と言う事と合わせて掲載されている。

 これ自体については、此れまで言われて来た関節が鳴る理由(主な物に関節液の中の気泡が潰れる時の音)とは、異なる物で興味深いが、同時に疑問も生じる。

 この記事では、指に関して「伸ばした時の音」にしか触れておらず、「曲げた時の音」に関してはノータッチなのだ。

 関節を伸ばした時に関節液の中に空洞ができると言うのは、実際にMRIで確認された事として書かれているのでそうなのだろうが、曲げた時にも空洞が出来るモノだろうか?同時に、この空洞は関節液内に気泡が生じたと考えられる訳だが、気泡が出来る時に「ポキ」「パキ」と言う、高い音が出るだろうか?

 気泡が出来る時に生じる音と言うのは、どちらかと言うと「ボコ」「ポコ」と言った類の物であり、「ポキ」「パキ」と言うのは、寧ろ気泡が潰れる時の音に近いように思う。

 実際に私自身が、自分の指で試してみた所、指を曲げた場合の音は「ポキ」であり、伸ばした時の音は「ポコ」に近い物であった。

 この事から考えると、伸ばした時に出る音は気泡が出来た時の音で、曲げた場合の音は気泡が潰れた時の音と言えるのではないかと思うのだが、この記事では曲げた時に出る音については触れられていないので、曲げた際に出る音に関しては疑問が残る所だ。

 さて、この記事では、手の指を鳴らす事は問題ないという風に書かれている訳だが、其れはあくまでも伸ばした場合の事であり、曲げて音を出した場合は如何だろう?指を曲げて音を出す機会が多い格闘家等は、後に指の関節が太くなってしまったと言う話を聞く事があるが、其れを考えると、一概に音を出しても影響はないとは言い切れない様にも思う。(私自身、昔鳴らし過ぎて指を少し痛くしてしまった経験がある。)

 「50年間左手だけを~~」と言う結果が有るからなのだろうが、伸ばした場合と曲げた場合では違いがあるだろうし、当然個人差もあるのだから、全ての人に影響がないとは言い切れないのではないだろうか……?

 所で、この記事では手を鳴らしても悪い影響はないとした上で、腰や首には大事な神経が通っていて、特に首は弱く、関節を鳴らすような急激な動きを頻繁に繰り返すと神経を痛める可能性もあるので控えた方が良いとも書かれている。

 其の後で、首の関節が鳴るような施術を受けると気持ちいいよ?と言う問いに対して、首を急に回したり伸ばしたりする行為は危険だとして厚生労働省が禁ずる通知を出しているとある。

 此れが、最初に述べた「カイロプラクティックの危険性を伺わせる内容」にかかって来るのだが、此の禁ずる通知とは、平成三年六月二八日付けの、医事第五八号通達「医業類似行為の取り扱いについて」の二項の二「一部の危険な手技の禁止」の事を言っているのだと思われる。

 この中では「カイロプラクティックの療法の手技には様々なものが有り、中には危険な手技が含まれているが、とりわけ頸椎に対する回転伸展操作を加えるスラスト法は、患者の身体に損傷を加える危険が大きいため、こうした危険の高い行為は禁止する必要がある事。」とある。

 確かに、此処だけを見るならば厚生労働省が禁止していると言えるだろうが、此れは危険行為と目すべき危険操作等を挙げ、同時に出された同課長談話で業界の自主規制を希求するものであるのだ。

 では、何故当時自主規制を求めておきながら、今尚無資格医業類似行為の世界における施術は、この自主規制に従って行われているのか?

 簡単に言うのならば、日本においてはカイロプラクティックの法律と言う物が存在せず、当該行為の有効・無効、有害・無害を定義する物が一切なく国家資格も存在しないからだ。

 国家資格が存在しないから、誰でも出来る。が、その反面、国家資格がない故に施術者のレベルはピンキリで、拙い技術で施術を行えば、当然問題は発生事は想像に難くない。

 では、カイロプラクティックは危険であるのかと問われれば、其れは否だろう。もしも、カイロプラクティックが人の身体に対して有害、無効果であるのならば、米国等の海外で、医者と同レベルの国家資格として認められよう筈はないからだ。

 この事を考えると、日本でもさっさと法制化すれば良いのではないかと思うのだが、如何言う訳か、其れは今日に至るまで成されていない。

 実は、今から70年以上前の昭和22年3月に、医療制度審議会は、医業類似行為に対する答申を厚生大臣宛に為し、その中で「療術の中には医療の補助手段として有効と考えられる物が有るので当面此れを禁止し研究せよ」と示したのだが、其れから70年以上経っても研究は蔑ろにして放置され、法制化が成されていないのだ。

 この答申の中で「医療の補助手段として有効と考えられる物が有る」と言うのは、カイロプラクティックにも当て嵌まると考える事が出来るだろう。

 当該答申時期に、当時のGHQも母国生まれのカイロプラクティック等を行っていた療術を医学的に研究し、医療の補助手段として活用させようと考えていたのだから。

 しかしながら、其れから70年以上経った今日においても、カイロプラクティック等の無資格医業類似行為は法制化が成されずに放置状態となり、それが結果として危険な施術を行う業者が横行する事態となっていると言えるのではないだろうか?

 

 今回の、この読売新聞夕刊の記事は、そうした危険行為を行っている者への警告であると捉える事が出来る反面、カイロプラクティックの有効性については触れられていないのが残念ではあるが、だからこそカイロプラクティックと称した無資格医業類似行為を行っている者は、より一層己の技術の向上と、知識の集積を行い、この記事に関して聞かれた際に、「自分の所はこう言う理由で安全です」と相手を納得させられるようにしておくべきだろう。

 公益法人である当協会としても、より一層の安全確保の為の努力を傾注すべきと改めて考えると共に、法律のないこの業界に対する警鐘として、この記事を受け止めた。

 

 

 

平成30年3月12日


特定非営利活動法人日本療術福祉協会
常務理事 中村 嶺太郎(なかむら りんたろう)

 

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プロフィール

HN:
中村嶺太郎
年齢:
40
性別:
男性
誕生日:
1983/11/02
趣味:
アニメの二次創作など

P R